隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

今日も寒い。
ダウンを着てマフラーを巻き直し
実家のそば屋と、我が家の真ん中辺りで佇む私。

午後2時前。
だいたいこの時間
家の前に立っていると、先生に連れられて可愛い幼稚園軍団が見えてくる。

私が田辺家に入ってから
桜ちゃんは午後の延長保育をやめて、給食を食べて帰って来る。

幼稚園からのお帰りは
だいたい保護者のお迎えか
コースが合えば
団体さんで帰って来る。

我が家はありがたいことに
ちょうど送りコースに入っているので、帰りは家の前までお友達と手を繋ぎ、桜ちゃんは元気に歩いて帰って来る。

「いくちゃんママ」
白いニットの帽子に、同じく白いボアのコートを着た桜ちゃんは、白くまの子供のように可愛らしい。
いつも私の姿を見ると
桜ちゃんは大きな声で私を呼ぶので

「いくちゃんママ」
「いくちゃんママ」
「いくちゃんママ」と……他の幼稚園児まで、私の名前を連呼するという。

なんだっけ……こないだ観た【ニモ】に出てきた鳥のようだ。

いや
まだ新婚さんで
26になったばかりなんですけど!

まぁいいか。
みんな可愛いからいいや。

「せんせいさようなら。みなさんさようなら」
これまた大きな声を出して桜ちゃんはあいさつをし、それに応えてみんなも「さようなら」とごあいさつして、儀式終了。

はいおつかれー!

いい発声練習になるなぁ。
紀之さんにもやらせたい。
ずっと部屋にこもって仕事だから、声も出さないだろう……あ、たまに『うまくいかないー』って仕事部屋で叫んでるから大丈夫か。

小さな白くまさんは私の手をギュッと握る。

可愛い。あぁ可愛い。

親バカな私。
バカな親は夫。

桜ちゃんと一緒に仲良く家に入る。
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