隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話


我が家で1番のお金持ちは
桜ちゃんかもしれない。

小学校1年生のお年玉の相場はいくらなのだろう。
2000円?3000円?
去年はいとこの子にあげたけど、小学生だったから3000円あげた気がする。
その下の幼稚園児には2000円にしたような。

我が家は年齢性だった。
5歳で500円。6歳で600円。
100円玉がいっぱいでとっても嬉しかった。
でもね、考えたら……15歳で1500円って……どうよ。
安くない?騙されてたわ。

両親からは少なかったけど
祖父母や親戚のおじさん。
お正月にお酒を持って遊びに来る、商工会のおじさん達からたくさんもらって嬉しかったなぁ。

そして親として初めてのお正月。初のあげる立場。

桜ちゃんにお年玉。
紀之さんに金額を相談すると「郁美さんの実家方式でいいですよ」って言われてしまった。

「それは少ないよ」
18歳で1800円だよ。悲しい。

「他からもらうから大丈夫」
当然って顔で彼は言う。

確かに
私の実家から5000円もらったし(嬉しいけど悔しい。私は高3で1800円だった)
紀之さんの実家から万札。
亡くなった奥さまの実家から万札。
隣の恵子おばさんと幼馴染みの銀行員から
他人なのに2000円ずつもらってしまった。

「貯まったらうちの銀行に預けるのだよ」
マジな顔して小学生に勧誘すな!

そうだ、ご近所からもいただいて
大金持ちの桜ちゃん。

紀之さんの膝の上
小さな手で集まったお年玉を数えてる。

うちの600円が一番安かったね。恥ずかしいなぁ、追加しようかな。
コソコソと横に行くと

「いくちゃんママ。桜はおかねもちだね」
ニコニコ笑顔で言われてしまった。
はい。その通りです。
家計費が足りなくなったら貸して下さい。
桜ちゃんと逆にテンション下げてると

「いくちゃんママからもらったのが、いちばんうれしかったよ」
思いがけない言葉が紀之さんの膝の上から聞こえてきた。

「そうなの?」
だって一番少ないよ。じゃらじゃらと重かったし。

「うん。いちばんうれしかった。だってジバニャン」
桜ちゃんはお年玉の袋を私にバーンと見せてきた。

そうだ。
妖怪ウォッチのお年玉袋であげたんだ。そこか。

「100円もいっぱいでうれしかった。ありがとう」
紀之さんの膝からストンと降りて、私にギューっと抱きついてきた。

小さくて温かくて愛らしくて大切な存在。

「喜んでくれてありがとう」
返事をして私も桜ちゃんをギュッと抱きしめると

紀之さんは優しく私達を見て笑ってた。


     【完】







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