隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
どのくらい経ったのだろう。
桜ちゃんごめんね。
桜ちゃんは嘘なんてつかないよ。
杏奈さんより私の方が好きって言ってくれたのに、素直に信じればよかったのに。
あんな言葉に惑わされて
桜ちゃんの小さな心を傷付けた。
自分の事ばかり考えて
一番大切なのは
桜ちゃんの気持ちなのに。
ママ失格だ。
目の前の扉が開き
紀之さんが目の前に現れた。
私は立ち上がり、桜ちゃんの部屋の前に立ちはだかる彼に「桜ちゃんは?」と、聞くと「寝ました」って答えた。
部屋に入りたいけれど
どうやら
彼は入らせたくないようだ。
部屋に私が入る前に
きっと話があるのだろう。
肩を落し
彼の前でうつむいていると
「杏奈が来たって、どうしてすぐ言わなかった?」
静かな声が怖かった。
「桜ちゃんが、寝てから話そうと思っていた」
桜ちゃんの前では言えなかった。
「何を言われた?」
問い詰めるような声が怖い。
「別に……」
「郁美さん」
顔をそらすと、腕を強く捕まれた。
「何かまた言われた?変な事言われて、信じてその気になった?」
「その気って?」
「くだらない事吹き込まれて、いじけて落ち込んでるんでしょう」
ズバリ言われたから
私も彼の顔を見上げ聞く。
「部屋にも入れない。私は桜ちゃんの何なの?紀之さんの何なの?」
今度は彼が黙る。
「『僕が桜の父親だ』って、じゃぁ私は何なの?」
泣いているつもりはなかったのに、いつのまにか頬に涙がボロボロこぼれていた。