その店
私は今

その店の
扉の前に立っている。

扉の横には
カラスの屍が逆さに吊るされていた。

羽を半分広げ
干からびた足元を巻かれ
頭上の壊れた看板から、垂直に降りているロープの端に足を絡め……カラスが死んでいた。

漆黒の羽が
最後の羽ばたきを願うように
途中まで広がっている。

最後に
飛び立とうとしていたのか

この路地裏から?
どこへ?

だらしなく開いた嘴(くちばし)から、小さな作り物のような舌がダラリとぶら下がる。

ガラス玉のような
小さく光る目が私を見つめる。

その瞳は……闇。

屍は問いかける

何をしに来た?
何を願いに来た?

お前の願いは叶うかな?

私の瞳はガラス玉だけれど
お前の目には光がないね。

誰かに捕らわれているのか?
自由になりたいのか?

逃げられないのか?

もがけばもがくほど
ロープは絡まり
お前の自由を奪っているのか?

それなら私のように
死を選ぶ方が幸せなのに

あぁ可哀そうな子。

屍の目は

笑っている。




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