悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~


「どうしてヘンリーは魔界で執事をせずに、ここを選んだの?何か決まりがあってここに配属されたとか?」


あたしが首を傾げて聞くと、ヘンリーはあたしを見て「いいえ」と優しい表情を浮かべながら首を横に振る。


「私が直接希望を出したのです。私は大悪魔王様がルカ様を世継ぎにと任命された時に、執事養成学校に入学したんです」


ヘンリーは、「今は世継ぎにヘイリ様がなっていますけど」と付け加えた。


「私は以前から、自由に人間と接触出来ないことに疑問を抱いていました。悪魔だろうが人間だろうが、この世に生を授かっていることに違いはないのに、なぜ、住む世界がこんなにも違うのかと」


ヘンリーの横顔が、少し切ない。


サラサラと吹く風はとてもぬるいけど、ヘンリーの白い肌を見ていると、夏の暑さはあまり感じなかった。


「私の家は貧乏でしたから、とても苦しい生活をしていたのです。父はずっと働き詰めで家には戻ってこないし、母も体が弱いのに遠くまで出稼ぎに行って」


魔界でも、貧富の差があるんだ……。


あたしは最初からこうやって王族の暮らししか見ていないけれど、こうやって苦しい生活をしている悪魔が、今もいるってことだよね……。




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