溶ける温度 - Rebirth -

……わ!ぶつかる!


「!すみません!」


どん、とぶつかった音がした。時すでに遅し。

よそ見をしていた私が完全に悪い。謝ろうと資料から目を離し顔をあげると、


「いえ。構いませんよ」


そうスマートな返しが聞こえてきた。


______なにこのひと。すごく、かっこいい。

年の頃は30前後だろうか。シルバーフレームのカチッとした眼鏡をかけ、髪型はさっぱりと短く切りそろえられている。
カフスのノリもパリッと清潔。薄くストライプの入ったダークグレーのスーツをスタイリッシュに着こなし、襟元にはどこかで見たことある社章が飾られていた。

満さんも相当上等な男だったけれど、どちらかと言えば少しやんちゃなところも見え隠れしたのを思い出せば。
この人はかなりの正統派で、どこか洗練された雰囲気を感じられる。

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