溶ける温度 - Rebirth -

大志さんが勤める企業は隔週の水曜日が早帰りデーらしく。
その貴重な一日を、私とのディナーに使ってくれたのだ。

お互いの住まいの中間地点の駅で待ち合わせて、そこからほどなく歩いてたどり着いたここは、アヴァンシィよりももう少し大人な雰囲気が漂う和風居酒屋。
かといってムードがありすぎるわけでもなく、初めての相手を連れてくるにはなんともセンスのいいお店だった。


「連絡するの、迷わせちゃったかな」


カラン、と頼んだアルコールの氷が揺れる。


「……心の準備が必要でして」


予想外の答えが返ってきたのか、大志さんは声をあげて快活に笑った。
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