隣の悪魔はご機嫌ナナメ



「うん、よく似合ってる」


鏡にうつるのは、紺の浴衣を着て髪をおだんごにしたあたし。



不器用なあたしの代わりに、仕上げもお母さんがしてくれた。



「ありがとう、お母さん」



「いいのよ。よくこうやって、させられてたもの。あの頃はいつも青久くんと一緒だったわね」



懐かしいわね〜とお母さんが笑った。



青久の名前が出てきて、あたしから笑顔が消えていく。



気づけば夏休みが、来てしまったのだ。



よく行っていて、好きだったはずの夏祭りも、2年前から行かなくなった。



この紺の浴衣も、クローゼットのなかにしまわれてしまった。



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