苦恋症候群
何はともあれ、この状況どうしよう。

私も同じように、雨空を見上げた。



「全然、やむ気配ないよねえ。天気予報あてにするんじゃなかった」

「そうですね。またひとつ人生の厳しさを思い知ったところで、そろそろ出ましょうか」

「へ?」



予想外な彼の言葉に、思わずすっとんきょうな声をあげて首を横に向ける。

三木くんは先ほど緩めていたネクタイを今度は完全に外して、自分のカバンにつっこんだところだった。



「ここにいても、仕方ないですし。近くのコンビニまで行ってビニ傘買いましょう」

「ええ? この雨の中走るの?」

「会社からタクシー使って帰るのも馬鹿らしいでしょう。……行きますよ」

「っわ、ちょ、三木くん……っ!」



少し前に私が考えていたことと同じセリフを言って、彼は自動ドアのボタンを押すと私の腕を掴む。

そのまま引っぱられるように、ふたりで外へと飛び出した。
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