苦恋症候群
バチャバチャと水を弾きながら、雨の中三木くんに先導されて駆けていく。

田口副部長のときと同じく腕を掴まれているというのに、先ほどのような嫌悪感はない。

それは相手がイケメンの三木くんだからなのかと思うと、自分も案外単純なんだな、と心の中で苦笑する。



「あーもう、このパンプスしばらく履けないわ!」

「俺のスーツの方がダメージでかいですけどね!」



前を走る三木くんの背中は、案外広い。

雨音が思いのほかすごいからお互い怒鳴るように会話して、もう何がなんだかわかんないくらいびしょ濡れで、いい大人が街中を必死に走ってて、一緒にいるのは最低男な後輩くんで。



「……あはっ」

「は?! 森下さん今何か言いました?!」

「何も言ってないー!」



それでもなんだか、この状況ちょっとだけ楽しいと思ってしまったのは。

私だけの、秘密にしておこうか。
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