苦恋症候群
私の若干うらみがましい視線に気づいているのかいないのか、三木くんは珍しく笑みを浮かべながら文哉さんと世間話をしている。

むむ、と少しだけおもしろくない気持ちになりながら、私は隣の麻智に肩を寄せた。



「……ねぇ、なんでよりによって三木くん誘ったの? 麻智ってそんな仲良かったっけ?」

「普通に仲は良かったよー。三木くんって、唯一の私たち3人共通の知り合いでしょ。同期の男連れてくるのも微妙だし」

「まあ……」



こそこそ小言で話しつつ、暗くなり始めた空を見上げる。

たしかに、文哉さんとしては『麻智の同期の男』が来るのはおもしろくないかもしれない。そもそも、私たちの同期の男性陣は彼女持ちや既婚者ばかりだ。

それなら一応顔見知りで、しかも『後輩』っていう一線が引かれた三木くんを連れてくる方が、妥当なのかもしれないけど。



「さとり、結構三木くんと交流あるみたいだし。いっかなって」

「交流、ね……」



不倫現場見られて、「虚しいですね」とか言われて、隠れ家にしてた屋上で会うようになって。

失恋後のやけ酒に付き合ってもらって、家にまで泊めてもらって、危うくいただかれそうになって。

そしてこないだは、彼のことがすきという可憐女子に責められた。
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