苦恋症候群
三木くんが振り向いて、つながれていた手が自然と離れた。

堪えきれず、私はその場にしゃがみ込む。



「大丈夫ですか? 森下さん」

「っはあ、はあ……っ」



私は必死で荒い息を整えているというのに、目の前でこちらを見下ろす彼は相変わらずの涼しい表情。



「……ふふっ」



びっくりするくらいの、体力差。今の自分には、なんだかそれがやけにおかしく思えて。

気づけば、肩を震わせて笑っていた。



「ふっ、あはははっ。こ、こんなに走ったの、久しぶりっ」

「………」

「ごめんね三木くん、ありがとうね。嫌な思い、させちゃったよね」



三木くんは、何も言わない。

それをいいことに、私は風に当たってすーすーする少し汗ばんだうなじに触れながら、うつむきがちに言葉を続けた。
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