苦恋症候群
そしてこんな話をしているヤスだって、実はすでに結婚していたりする。

少し前に子どもも産まれたばかりで、ここしばらく同期会にも来れていなかった。

だから久しぶりの同期会に、かなりテンションが上がっているらしく……さっきからやたらと人に絡みたがる。つい先ほどまでは、別の同期に絡んでいた。

私はそのへんにあった手つかずのビールジョッキにぐびぐび口をつけながら、しっしとヤスに片手を振る。



「ヤスあんた、そろそろ帰んなくていいの? 家で奥さんと赤ちゃんが待ってるでしょ」

「今日は思いっきり飲んできていいって言われたからへーき。やさしいからな、俺の祐美(ゆうみ)は!」

「はいはい、ゆーみがやさしいのは知ってる知ってる」



とはいえ、そろそろみんなぐだりモードだ。

私は周りを見渡して、寝ている人は容赦なく起こした。



「ほらほらー、みんなお開きにするよー。ちゃんと立って家まで帰ってねー」

「……やっぱすげぇわサト。あんだけ飲んでなんでそんな正気」

「体質よ、体質」



こんなんだから、甘い恋愛も遠のくのかしら。

同期からの不本意な尊敬の眼差しをあしらいながら、私はこっそりため息をついた。
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