苦恋症候群
──ああ、これ、デジャヴだ。


ベッドを背にした私の真上には、整った三木くんの顔。

痛いくらいに押さえつけられた左手首が、彼の高すぎる体温のせいかじわりと熱い。



「み、きく……」

「馬鹿ですか、あんた。据え膳はいただきたいって言ってんのに、なんでまたノコノコ、こんなとこに来てるんですか」

「………」

「ほんと、呆れる」



上半身だけがベッドに乗っているような無理な体勢だから、少し背中が痛い。

だけどそれよりも、熱のせいでつらそうにしながら──それでも私に軽蔑したような眼差しを向ける彼に、ずきりと胸が痛んだ。


……そっか。ひとり暮らしの男の人の部屋だなんて、こんなところにノコノコ来る私は、やっぱり馬鹿なのか。

そしてこの体勢は、もしかしてまたもや貞操の危機?


……ああ、でも。

でも、彼は──……。
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