苦恋症候群
ふ、と思わず口もとを緩ませた。

そんな私を見て、三木くんは怪訝そうに眉をひそめる。そんな彼を、まっすぐに見上げた。



「なに言ってるの。そんな、熱のせいでふらふらなくせに」

「は?」

「それに私、三木くんはそういうことしないってわかってるから。……無理やりそういうひどいことをしない、やさしいひとだって……知ってる、から」



だから、こんなことされても、こわくない。

そう言って微笑んでみせると、三木くんは驚いたように目を見開く。

だけどそれも、一瞬のこと。



「……ハッ、」



真上に見える彼が鼻で笑ったかと思うと、きつく掴まれていた左手首が解放された。

見上げた先の彼は、口もとには笑みを浮かべているのに……ひどく苦しんでいるような、瞳をしていて。

どくんと、心臓がはねた。
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