苦恋症候群
【じゃあ、7時半に俺行くから、家にいて。話がある】



……ますます混乱する。

話って何だろう。悪い考えしか浮かばない。

混乱しながらも、家に上げるのは良くないと、ぐちゃぐちゃな思考の片隅で思いつく。



【でもウチ、散らかってるから】


【俺の車の中でいいよ。7時半な】



彼の中で、もう話はまとまったようだった。その後【話って、今日しなきゃだめなことなの?】というメールを送ったけれど、もう返事は来ない。

ヤマくんは協調性はあるけれど、1度こうと決めたら、簡単に曲げない強情さもある。きっと、あたしが何を言ってもこの約束は絶対なのだろう。

食欲は沸かないけれど、仕方なくお弁当に手をつける。



「……はあ……」

「あららー葉月さん、これ飲む?」

「あ、すみません、大丈夫です……」



たまご焼きを飲み込んでまた深いため息をついたら、田辺さんが今度は野菜ジュースを差し出してきた。

それを丁重に断って、さくりとミニトマトにフォークを刺す。

酸っぱくて、中はどろどろしてる。まるであたしの今の心境のようだと、ミニトマトを噛みしめながらぼんやり思った。
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