苦恋症候群
「わ、おいしい」

「でしょう。カラオケのうっすい酒なんて飲めたもんじゃないです」

「あははー、まあねぇ」



思わず笑って、こっそり目の前の顔をうかがう。

なるほど、三木くんはこういうところで飲んでるのか。

ここは私もぜひ、また来たいお店だなあ。


ふう、と一息ついた三木くんが、おもむろに軽くネクタイを緩める。

見た目上等な彼が見せたその仕草に、自然とどきりとしてしまうけれど。

私はまったく意識してませんといった様子で、ひらひらと片手を振った。



「あ、三木くん私全然気にしないから、ふつーにくつろいじゃってね。先輩っていっても、直属の上司でもないし」

「あーまあ、そんな気にしてなかったですけど。屋上とかでも」

「……たしかにそうね」



今までの彼とのやり取りを思い返して私が神妙にうなずくと、ふっと彼が笑みをみせた。

おやおや、と内心思って、目をまたたかせる。
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