苦恋症候群
「なんで……」

「俺が、ふたりのこと知って……余計なこと、言ったからですか」



今度はさっきよりも詳しく、そう言った三木くん。

私は小さく笑みを浮かべ、首を横に振った。



「ちがうよ。ていうか、うーん……三木くんの“せい”とかじゃなくて、三木くんの“おかげ”っていうのは、あるのかも」



訳がわからないといったふうで、彼が視線で話の続きをうながす。

私はグラスの中の綺麗なオレンジ色を見つめながら、ゆっくり、言葉を紡いだ。



「あのね、私、真柴支店長とのことは誰にも言ってなかったの。まあ、当たり前だろうけど」



ぽつぽつと語る私の言葉を、三木くんは黙って聞いてくれている。

それが今は、ありがたい。



「だからね、私のことを叱ってくれる人も、誰もいなかったのよ。……それはダメなことだよって、第三者から、指摘してもらう機会がなかった」



小さく息をついて、私はカシオレをひとくち飲み込んだ。

さわやかなオレンジ。その中に、カシスの甘酸っぱさ。

やっぱり、ジュンさんの作るお酒はおいしい。
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