苦恋症候群
「どうかしましたか、森下さん」



その問いかけにも無言の私に、ますます三木くんは困惑したようだ。



「なに──」

「……えへへ、別れたの」



え、とテーブル向こうの三木くんが、驚いたように口を開けた。

私はわざとらしく彼から視線を外しながら、運ばれてきたばかりのカシオレを見つめる。



「ていうか、うーん。不倫関係の解消っていうのも、『別れた』って言い方は正しいのかな」

「それは……」

「とりあえずまあ、うん、別れました。さっき、懇親会の前にね」



なんだか無意識に、乾いた笑みを浮かべながらそう言うと。

目の前で、三木くんが持っていたグラスをテーブルに置いたのがわかった。



「……俺のせいですか?」

「えっ」



思いがけない言葉が聞こえ、反射的に顔を上げる。

予想外にじっと彼がこちらを見据えていたから、思わず息を呑んだ。
< 73 / 355 >

この作品をシェア

pagetop