苦恋症候群
「ごめ、……ごめんね、いま、止めるから……っ」



言いながら、私はぎゅっとハンカチを握りしめる。

うわあ、なんてことだ。会社の後輩くんの前で、こんなボロボロ泣いちゃうなんて。

でも、どうしよ、止まんない。


ふっと目の前で、三木くんがため息をついたのがわかった。

ああやっぱり、呆れられてる。

そう思ったのもつかの間、彼が、いつもの淡々とした声音で話し始めた。



「別に、無理に止めること、ないと思いますけど」

「え……」



予想外のセリフに、ハンカチから少しだけ目を出して彼を見た。

三木くんは私じゃなくどこか壁の方を見ながら、さらに言葉を続ける。



「だって、涙が出るっていうのは、それだけその人のことを想ってたってことでしょう。失恋しても泣くのを無理に堪えて笑ってるより、素直に涙を流す方がずっと人間らしくて、俺はいいと思います」

「……っみ、」

「それに……思いきり泣いといた方が、スッキリするでしょ?」



そう言って三木くんが、そこで私と視線を合わせた。

テーブルの向こう側には、どこか『仕方ないな』という心の声が聞こえてきそうな、小さな笑み。

私はなぜかまた涙がこみ上げてしまって、再び顔をふせたのだった。
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