もう二度と、離さない。

宣言

「ちょっと!それ絶対彩華のこと好きな証拠だって!」
「そ、そうかなぁ」
「そうだよ!」
 橘先輩と帰ったときのことを全てナツに話した。「彩華は別」と言われたあの言葉もちゃんとナツに報告した。恥ずかしかったけど。
「普通、友達とか後輩としか思ってない人に特別みたいなこと言うと思う?」
「それは…ないかな」
「でしょ!?」
「うん」
「だから自信持ちなよ!絶対に彩華のこと好きなんだって!」
「そ、そうなの…?」
「そうだね、今からでも遅くない。告ってこい!」
「それは嫌です」
 ナツは気が早すぎるんだよ。焦らなくても大丈夫…だと思う。亜美さんのこともちゃんと気にかけてなきゃ!

――昼休み――
 今日はナツと図書室に来てた。この学校、図書室に来る人あんまいないから静かで一番落ち着く場所。
「いやぁー…あともぅ2時間くらいで部活だね♪」
 気が早いナツ。この人の部活にかける思いはすごい。

ガラッ――――
「ん?誰か来た?」
「彩華の例の人だったりしてー?」
「そういうこと言うのやめろ」
 ナツと軽い言い合いしてたら――――――――
「お!彩華じゃん」
「橘先輩!!」
「あらー…ホントに当たった」
 唖然としてるナツ。私もビックリしてますよ。振り返った先には私の好きな橘先輩がいるんだもん。
「どうしてここに?」
「俺らの一番好きな場所に来ただけ」
 橘先輩もここが好きなんだ…!なんか一緒で嬉しい♪
「橘先輩もここが好きなんですか!私もです♪」
「こいつが彩華?」
 声のした先には橘先輩ほどではないけどカッコイイ背の高いハスキーバイスの男の人。
「そ。こいつが彩華。あ、この間の――――」
「吉田です。この前はどうもありがとうございました」
「いや、別に。あ、こいつは俺の親友」
「竜ヶ崎シン。よろしく」
「「よろしくお願いします」」
 私とナツは声を揃え挨拶した。それから橘先輩と竜ヶ崎先輩、ナツと私でしゃべり昼休みを終えた。

――放課後――
 今は部活中。今日の昼休みは楽しかった。竜ヶ崎先輩とアドレスを交換したり勉強の話ししたり。とっても楽しい時間だった。
「今日は楽しかったねー、彩華?」
「うん」
 ナツも楽しかったらしい。
「今日は一緒に帰る?」
「うん!帰ろ!」
「ちょっといいですか?七瀬彩華ちゃんいますか?」
 私を呼んだ人。それは――――
「亜美さん……」
 古瀬亜美さん。一番近づきたくなかった人…。
「あ、彩華ちゃん!ちょっといい?」
「え、あ、はい。ナツ、ちょっと行ってくるね」
「彩華、気をつけなよ?何言われるかわかんないんだから」
 何言われるかわかんない、か。確かにそうかも。でも私、この人にだけは負けたくない。

「何の用ですか?」
「彩華ちゃんって、蓮太のこと好きなの?」
 やっぱりそうきたか。この人が私に話すのは橘先輩のことしかないに違いない、と予想してたことが運良く当たった。ホントは当たってほしくなかったけどね!
「はい。それが何か?」
「やっぱりか!いやぁ、この前見たんだよね。彩華ちゃんと蓮太が一緒に帰ってるところ。それで…たまたま聞いちゃったの。まぁ、聞こえたんだけどね?“彩華は別”って」
「え……」
 嘘…。聞かれてたんだ…。この人にだけは聞かれたくなかったこと。見られていても聞かれたくはなかった。
「彩華ちゃんさ、蓮太にあんなこと言われたくらいで調子に乗ってんじゃない?」
「どういうことですか?」
 亜美さんが言った言葉…聞かなきゃよかったって、後々後悔した。
「だから、特別扱いされてんのは彩華ちゃんだけじゃないんだよ?ってこと。うちも蓮太に言われてるの。“亜美は特別だから”って」
「!!」
「気に入られてるのは彩華ちゃんだけじゃないんだよ?うちも蓮太に気に入られてるんだから」
「そうですか」
「あれ?平気な感じ?」
「はい。全然」
「じゃぁ、見せつけちゃっていい?うち、蓮太は誰にも渡したくないんだよね~。うちだけのものにしたいの。だから、彩華ちゃんの前でも普通にいつも通りイチャイチャしててもいいってことだよね」
「……」
「決まり!じゃぁ、彩華ちゃんは蓮太に本気じゃないってことで。スッキリした、バイバイ♪」
「…はい」
 バカ…。なんで嘘ついちゃったんだろう。「彩華ちゃんは蓮太に本気じゃないってことで」なんて…バカすぎる…。でもいくら先輩でも譲れない。絶対に譲らないからな!!
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