氷の卵
そうこうしているうちに、私の誕生日が迫ってきた。
誕生日は土曜日。
啓と会えるのは金曜日までだったから、私は少しさびしく思っていた。


金曜日の朝、いつものように紅茶を飲みながら、何の気なしに言ってみた。


「明日誕生日なんだ!」

「へえ!じゃあ、誕生日プレゼントあげないとね!」

「え?」

「え、って何だよ。親しくなったんだから。その記念に。」

「え、でも。そんなの悪いからいいよ。」

「いや、実は前から雛を連れて行きたい場所があってね。それがプレゼントになるか分からないけど。」

「連れて行きたい場所?」

「そう。明日、行かない?」


少し考えた。

本当は日曜日が定休日で、いつもは土曜日も店を開けている。
でも、なんだかどうしても、啓と一緒に行きたかった。


「うん!行こう!」

「良かった。」


にっこり笑う啓は、本当に嬉しそうで。
私はうぬぼれそうになる。


でも違うんだ。


啓が私に優しくするのは、ただあの日知り合った友達同士として。

啓には忘れられない恋人がいるから。
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