桜の木の下で-約束編ー
一花先輩はと言えば、
司を巻き込んで、ようやく選び終わったらしく
紙袋を三つも、司に持たせてにこやかに近づいてきた。
その後も、司と一花先輩の買い物は続くけど、
私は軍資金が尽きた後。
二人の後ろをついて歩くだけだけど、
もう十分、満たされたんだ。
和鬼の笑顔が見れるって思えたから。
和鬼の笑顔が私の不安を
取り除いてくれるから。
「司、一花先輩。
私、少しお手洗い行ってきます。
ゆっくり買い物楽しんでくださいね」
そう言って、買い物の邪魔をしないように
二人の傍を離れると案内板で、
お手洗いの位置を調べてエレベーターへと向かう。
その途中、泣きながら
ぶつかってきたまだ幼い男の子。
男の子はぶつかった反動で
床にひっくりかえってしまった。
慌てて、手を差し伸べて
声をかける。
「ぼく、大丈夫?」
差し出した手を
小さな手が、
ギュっと掴む。
落ち着かせるように
抱きしめて
ゆっくりと
泣き止むのを待つ。
必死に涙を
とめようとしながら
男の子は言った。
「パパ……どこ?
ッく……ママ……」
迷子?
一人、放っておくわけにもいかず
その子を抱き上げてゆっくりと、
インフォメーションセンターへと歩いていく。
そこで……
この子のお父さんとお母さんを
呼び出して貰えたら。
手を繋ぐ、その小さな掌から
伝わる体温は私が殆ど知ることのない温もり。
一緒にエレベーターに乗って
1階のインフォメーションセンターの
受付嬢に迷子の男の子であることを伝える。
不安にならないように両親が来るまで、
傍で待つことを選んだ私は鞄の中から、
飴を取り出して、ぼくに食べさせる。
藤堂 望(とうどう のぞむ)くんと言う、
その男の子はいつの間にか、私になついて
隣でちょこんと、座って飴をなめながら笑いかけてくれる。