桜の木の下で-約束編ー


「ごきげんよう。
 咲、今朝はどうかして?」

「ごきげんよう。

 依子先輩、連絡が遅くなりまして申し訳ありません。

 今朝、起きた時から頭痛が酷くて動けませんでした。

 今から準備が整い次第、学校には向かいますが
 今日の朝練はお休みさせて頂いて宜しいですか?」


ドキドキし緊張する鼓動を感じながら告げる。



せっかく、依子先輩の今大会のパートナーにして貰ったのに
発表の翌日から、朝練休むなんて……最低だよ。



「まぁ、それは大変。
 咲、ゆっくりとお休みなさいな。

 学校にも気を付けて来るのよ」

「有難うございます。
 それでは、失礼します」



依子先輩との電話を終えて、
少しだけ心にゆとりが戻ってくる。



まだ怠さの残る体に気合を入れるように
両手でパンパンっと頬を打った後、
私は制服に袖を通して鞄を手にして階下へと降りた。



「咲、おにぎり作っておいたから、
 後で食べになさい。

 体調が悪いときは、いつでも連絡してきなさい」



そう言ってお祖父ちゃんに見送られて、
私はいつもの道程を通学し始める。


こんな体調の時くらい、
遅刻してでも電車で行けばいいのかも知れないけど、
それでもどうして、うちの御神木に挨拶をして出掛けたかったから
いつもの様に山越え経由での徒歩通学。


神社へと続く坂道を歩いて、
いつもの様に御神木の前で鞄を置いて抱き付く。





坂道を上り、
桜塚神社の御神木の前へと向かう。




『おはよう。
 今日も1日、見守って』




そう念じる私に、桜の木は
不思議な映像を流し込んでくる。





桜の木の下でプラチナの髪・朱金の瞳の少年に
抱かれる私。





顔なんて見えなくて、はっきりわからないのに、
プラチナの髪と、瞳の色だけは鮮明で。





えっ?

何?

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