桜の木の下で-約束編ー


「咲、お帰り」

「ただいま」



咲はそうやって言いながらも、
ボクの後ろの二人が気になるみたいだった。



「ごきげんよう、咲。
 悧羅の龍王寺(りゅうおうじ)様は素敵な方でしょ」

「一花先輩、有難うございます。
 今日も無事に、練習させていただけました」

咲はそう言って、一花にお辞儀をした。


「って言うか、一花のおかげで
 今も咲が一人じゃないことを知って安心した」

「司」

「一花、帰るよ。

 私たちはこれから逢瀬を楽しむ二人には邪魔ものよ。

 ほらっ」


司が一花を引きずっていくように
神社から離れていく。



「咲、和鬼と楽しんで。
 何かあったら言いな。

 私も一花も、咲の味方だから。

 和鬼っていったわね。

 咲、泣かしたら誰が許しても私が許さないから」




そう言いながら、ゆっくりと去っていく二人。




桜の木の下、ゆっくりと背中を合わせるように
腰掛けたボクと咲。





「良い友達だね」

「……うん……。

 司も一花先輩も私がこの街に来た時から
ずっと一緒に居てくれる大切な人」

「知ってる」


「有難う。

 和鬼、二人に逢ってくれて……。

 和鬼の話、二人には隠し事せずにしたいって
 思ってたから」
 

「そう……」




咲と過ごす時間はいつも優しくて、
ボクを包み込んでくれる。



「……咲……。
 一花と司に突き付けられた。
 
 明日、咲の用事が終わったらボクの仕事場へ来て。

 ツアーは中日でお休みだから、
 TVの収録が入ってるんだ。

 YUKIとしても、 和鬼としても、
 ボクが守りたいものは咲だけだから。

送るよ……今日はもう遅い」



咲を抱き上げると風の力を借りて、
ふんわりと舞いあがる。
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