モテ男とバレンタイン
「……うん、美味しいよ。食べられない一哉がかわいそう」
「かわいそうで悪かったな。でも、ちえりが喜ぶならそれで良い」
ふわり、と。
柔らかい微笑みを向けられる。
砂糖の塊を丸飲みしたみたいな甘さが、身体中に広がった気がした。
さっき食べたトリュフなんかよりも、何百倍も甘ったるい。
……ああ、これだ。
あたしはこの笑顔のために、毎年バレンタインになると一哉の部屋に来るんだ。
チョコレートを美味しそうに食べる度に、一哉は嬉しそうに笑ってくれる。
その瞬間が、たまらなく好き。
一哉が女子から貰ったチョコレートの消化係だと思うと気分は下がるけど、それで一哉が喜んでくれるなら十分だ。
そう思わなければ、きっとバレンタインを乗り越えられない。
「……さーて、次はどれを食べようっかな~」
鼻の奥がツンと痛くなる。
強がって出した声は、心なし震えていた。