モテ男とバレンタイン



ベッドの上から次に食べるチョコレートを取ろうと手を伸ばす。


明らかに本命っぽい本格的なラッピングのものは避けた。


さすがに今は、一哉への本気の気持ちが入っているものを食べる気力はない。


だから、この前スーパーのバレンタイン特設広場で見かけた既製品に迷わず手を伸ばした。


だけど箱に触れる直前に手首を一哉の手によって掴まれて、容易く動きを止められてしまう。



「一哉……?」



掴まれた手首の先を辿れば、一哉が真剣な表情をしている。


ぎゅっと力が込められて、逃がさないと瞳が告げていた。



「ずっと、思ってたんだけどさ。……ちえりは、何でチョコレート渡してくれねーの?」



ドックン……と、心臓が強く波打った。


一哉の目が細められているのは、怒っている証拠だ。


どうして怒るの?

その理由が分かるようで全く分からなくて、ふっと目を逸らした。


手首は二人の間で掴まれたままだから、どうしても気まずさが残る。



< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop