モテ男とバレンタイン
ベッドの上から次に食べるチョコレートを取ろうと手を伸ばす。
明らかに本命っぽい本格的なラッピングのものは避けた。
さすがに今は、一哉への本気の気持ちが入っているものを食べる気力はない。
だから、この前スーパーのバレンタイン特設広場で見かけた既製品に迷わず手を伸ばした。
だけど箱に触れる直前に手首を一哉の手によって掴まれて、容易く動きを止められてしまう。
「一哉……?」
掴まれた手首の先を辿れば、一哉が真剣な表情をしている。
ぎゅっと力が込められて、逃がさないと瞳が告げていた。
「ずっと、思ってたんだけどさ。……ちえりは、何でチョコレート渡してくれねーの?」
ドックン……と、心臓が強く波打った。
一哉の目が細められているのは、怒っている証拠だ。
どうして怒るの?
その理由が分かるようで全く分からなくて、ふっと目を逸らした。
手首は二人の間で掴まれたままだから、どうしても気まずさが残る。