小さな死神

脱出作戦

変わらずマスコミはいた。
数は減ったようだが、それと物見遊山の野次馬ども。
「裏から出られないかな?」
ヴェスパにタンデム。二人ともサングラス。変な感じの二人。家の前を通り過ぎて路地へ入り込む。
「あら?裏もいるなぁ・・・。」
5~6人の男女がたむろしている。後ろを通過すると胡散臭げな目。

公園の反対側にヴェスパを止めた。
「おい?さえこ?いい考えがある。まだ黒服の男は怪しいのか?」
「警察は本気でそうは思ってないけど、まだ発表はされてないね。」
「じゃ俺が囮になる。」
「見た目怪しいからぴったりだね。」
なんとでも言え!

かなり大回りして由香の家の裏へ回った。
・・・さえこはちゃんと反対に回り込んだかな?
小道具の小型の双眼鏡を首から下げて、ぶらぶら
近くの電柱に影からわざとらしく家の中を覗き込んだ。

その頃さえこは、反対側から様子を見ていた。
・・あいつ中々うまいなぁ。隠れてるって感じなんだけど、しっかり見えてる。早く誰かみつけないかなぁ?

最初に見つけたのは地元TV局の女性アナウンサーだった。
「ねぇ、あの男・・・?」
「黒服?・・・例の男か?」
カメラマンが答える。
「早く!追いましょう!スクープよ!」
マスコミの人間は『スクープ』って言葉には非常に敏感だ!
我先にと走り出した。
津上はゆっくりと間合いを計って走り出した。
ばたばた、どすどす、かつかつって色んな足音が交錯しながら追ってくる。
ちらって後ろを見ると裏口の空っぽ。作戦成功!
・・・さえこ。後は頼んだぞ。
いつもは全く無い正義感に目覚めたマスコミは、焦って追いかけてくる。

よし!いまだ!
さえこは裏口に取り付いた。
「由香!開けて!由香ぁ!」
激しく扉を叩いた。異常な位早く扉が開いた。
「由香!行くよ!」
うむを言わさず由香の手をつかんで外に飛び出した。
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