~D*A doll~
龍翔は俺に「……莉々香お願いします。」とそう頭を下げてから、心底鬱陶しそうに、蹲っている毒牙の総長を引きずって部屋を急いで出ていった。
そして美奈とよばれている女も心配そうに戸惑いながら、毒牙の総長と一緒に出て行った。
ここに残るのは瑞希と俺と、倒れている莉々香だけ。
龍翔は本気で莉々香に惚れているだろう。
あいつが俺に頭下げたことって……初めてかもしれない。
先輩にあたる俺ですら、手加減なんてせずに思うままに色々やってくれる男だ。
莉々香のためならきっと、何でも出来るんだろう。
ただ不器用なだけで。
本当はさっきのように真っ直ぐな思いを持っているのに。
…イヤ。
真っ直ぐすぎるから少し歪んでいる莉々香とは合わないのかもな。
……今のうちは。
俺はそんなことを考えながらも莉々香の傍に居る瑞希のもとへと近寄り、そっと瑞希の肩を叩く。
「…咲哉さん。」
「瑞希、莉々香の事は俺に任せろ。瑞希も龍翔の所に行って後処理して来い。」
瑞希は俺の言葉を聞き、恐る恐る顔を俺に向ける。
……瑞希?
「咲哉さんって……莉々香ちゃんの事……。…イヤ、何でもないです。僕、行ってきます…。」
そう、言葉を残して部屋を出ていった。