隣人
目を覚ますと男の胸板が目の前にあった。
疲れてそのまま寝てしまったのかと我ながら後悔する。
朝方まで組敷かれていた体が異常にダルい。この男はいつもこんな抱き方をするのだろうか?
そうだとしたら、この男に抱かれる女はよほどタフじゃないと持たないだろうなと思う。
すぐに着替えを済ませた私に"またな"と声をかける男。しかし、私は無言で男の顔も見ずに部屋を後にし、自分の部屋のドアに鍵を差し込んだ。
そう。私の部屋はこの男の隣である。
実は昨日、3年間同棲していた男に捨てられた。そして見ず知らずの隣人に抱かれた私はなんて汚らわしい女だろう。
自分の浅はかさに無性に腹が立ち、冷蔵庫からビールを取り出すと空腹の体に大量にアルコールを流し込んだ。