隣人
案外あっさり引き下がった幸田さん。ごめんなさい。私がはっきりしないばかりに、優しい彼に嫌な思いをさせてしまった。
私はやっぱり最低な女。
背中を向けた幸田さんだったが、くるりともう一度こちらを振り向いた。
「そうだ。君、九条奏多だろ?スキャンダル流したら面白いだろうね」
「ふん。流したきゃ流せよ。俺はびくともしねーし、美月と別れるつもりもない」
「ははっ、それを聞いて安心したよ。どうぞお幸せに」
最後に幸田さんは私に笑いかけて去って行った。2ヶ月という短い間だったけど、彼とやり取りした日々は楽しかった。
ありがとう幸田さん。お元気で。
「いつまでも名残惜しそうに見つめてんじゃねーよ」
「別にそんなんじゃないし」
「お前はほんとフラフラしやがって。いいから早く行くぞ」
私の腕を取り強引に私の部屋の前まで足を進め、鍵を私から奪い取りドアを開けて中に押し込むと、素早くドアの鍵をガチャリとかけた。
「美月、俺を出し抜いたつもりかもしれないが残念だったな」
そして私を玄関の壁に押し付け深く唇を奪う。
どうしてこの場所が分かったのかとか、私をなぜ探してくれたのかとか、聞きたいことは山ほどあったが奏多のキスでうやむやになった。