イケメン王子の花メイド
「あ、棗くん。今日本借りてもいいかな?」
ふと思い出したように言った綾小路は、男性がコロっと心を温めてしまうような、既に天使の武器と化した柔らかな笑顔を棗に向けた。
しかしそんな必殺ものの攻撃をものともせず、棗は無表情で答える。
「ええいいですよ。でもなんでわざわざ俺の本を」
「うーん、私は棗くんの本が借りたいの。神永くんも棗くんから借りてるらしいじゃない」
「まあ、別に構いませんが」
意味が分からないが、まあどうでもいい。と棗は軽く息を吐く。
綾小路は何を考えてるか分からない。
美しく麗しい子だと周りから言われていることには同感であるが。
まあどうでもいいけど。
そんなことをボーッとしたまま考える棗の横で、気付かれないように綾小路はクスリと笑った。
かくして、棗の心を掴むその運命の相手はこの先変わることがあるのだろうか。
既にいるのかどうか。