イケメン王子の花メイド
「……加奈子はね、とっても優しくていい子だったわ。あたしと違ってね」
そう話し出した叔母さんは、少し辛そうに顔を歪めている。
「習い事も勉強も何もかも、あの子はあたしより優れていたわ。あたしが何を頑張っても、あの子はずっと上を行ってた」
お母さんは確かによく表彰状やトロフィーを持っていた。
きっとそれは、完璧だったんだろう。
「……そりゃあ比べられたわ。姉であるあたしより妹の方が優れているなんて、みじめなもんよ。両親や親戚はずっと加奈子を褒めてた。あたしの前でね」
「……」
私には兄弟がいないから、姉妹で比べられる事の辛さなんて分からないけど、
きっととても辛いものなのだろう。
それは叔母さんの顔を見ていると、ひどく伝わってくる。
「……あたしは元々性格が歪んでたし、それでも優しいあの子なんか見てたら、どんどん自分が醜く思えてきたわ。
……好きになんてなれるはずなかったわ」
叔母さんは目を潤めながら、ぎゅっと腕を組む力を強めた。
「どうしても……加奈子を好きになれなかったのよ。あの子さえいなければって、いつも思ってたわ。……そんな自分も嫌だった」
……そんなの、叔母さんだけじゃないはず。
叔母さんの性格が歪んでるとか、関係ない。
辛いのは……叔母さんだけじゃないはずなんだ。
「誰もあたしなんかの味方はいなかったのよ」
叔母さんの瞳からは遂に涙が溢れ出した。