君の命の果てるまで
第3章 悲しい愛

仲いいのかな

「奈緒ちゃん!」


「あ、依田さん!」



最近、悠以外に仲良しになった人がいる。

それは、看護師の依田さん。


いつも明るくて、はきはきしていて。

彼女と話していると、嫌なことなんて忘れてしまうような、そんな人。



「ね、最近奈緒ちゃんって、悠と仲良しだよね!」


「え?……依田さん、悠のこと知ってるんですか?」



彼女は、楽しそうに笑う。



「知ってるよ!悠とはもう長い付き合いだからね。お父さんのこともだけど、その前から。」



そうなんだ……。

つまりは、お父さんが入院する前も、悠はここにいた。

何故だろう。



「悠がちっちゃくて可愛い頃から知ってる。その頃から憎まれ口ばっかりきいてたけど。」


「そうなんですね。」



でもさ、と言いながら、依田さんはいたずらっぽく笑った。



「悠は最近、よく笑うようになった。それに、ちょっと大人びたような気もするし。誰のおかげかなあ。」


「え?誰のおかげでしょうね。」


「奈緒ちゃん、あなたよ。」



依田さんは、私の隣に座って言った。



「悠は、奈緒ちゃんに会って救われた。」



驚く。

そんなこと……。



「救われてるのは、私の方です。依田さん。」


「それなら、これからも一緒にいればいいんじゃないの?ふたりはさー。」



依田さんが、勢いを付けてベッドから立ち上がる。

スカートのしわを伸ばして、そして、笑顔で私に向き直った。



「悠をよろしく、奈緒ちゃん。」



思わずうなずくと、依田さんは目を細めた。

そして、病室から出て行く。

うきうきしたその後ろ姿に首を傾げながら、私は悠の面影をそっと胸に描いた。
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