ナナイロのキセキ
次の日の夜も、亮一さんはいつも通りに電話をくれた。

けれど、昨日の話題には触れなくて、どこかお互いに遠慮しているような空気が流れる。


(なんか、気まずい・・・。)


いつもよりも早めに電話を切る。

結局、次に会う約束はできないままだ。

亮一さんが私を大切に思ってくれているのはわかる。

私ももちろん大切で、大好きで・・・。

だから、今回のことで、このまま気まずいままだとか、別れることになったりだとか、そんなことにはならないだろうとは思っている。

思っているけど・・・。

遠距離が続く限り、また、こういうことが起こるかもしれない。

そしてそれが何度も重なってしまったら・・・。

私たちの気持ちは、変わらずにお互いを思い続けていられるだろうか。

気持ちは、離れていったりしないだろうか。

通じ合わない気持ちのジレンマと、いつまで続くかわからない、遠距離への不安。

私は少し、疲れてきてしまったのかもしれない。


(亮一さんは、どう思っているのかな・・・。)


離れていても、風景の似た街に住む私たち。

かすかに潮風の香りを感じる、お互いの場所。

記憶の中の西の街を辿りながら、私は大好きな人のことを想っていた。

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