ナナイロのキセキ
「・・・あ、座りにくかったら、シートの位置とか適当に直して。」

信号待ちで車が止まると、坂下さんは照れ隠しのように話題を変える。

「はい。」


(・・・と言っても、別に変えなくても大丈夫かな。)


考えながら、調節レバーに手をかけた時、ふと、

前の彼女も座っていたのかな、と、悶々とした気持ちがよぎる。

それと同時に、あることに気づきはっとすると、

急に緊張してそわそわしてしまう。

「大丈夫そう?」

「あ、はい。大丈夫なんですけど・・・。」

「うん?」

「お父さん以外の男の人の車・・・助手席に乗るの、

初めてだなって思って。」

「え?そうなの?・・・かなりうれしいな、それ。」

淡々とした口調ながらも、そうつぶやく坂下さん。

「・・・・・・こんなこと聞くのもなんだけど・・・。

えーと、今まで付き合ってた人とか、いなかったのかな?」

「高校の時に一人だけ・・・。その後は全く・・・です。」

「・・・そっか。」

そう言うと、何かを考えるように、坂下さんは黙り込む。

「モテない女子、バレバレですよね。」

なんとなく沈黙が気まずくて、えへへ、と自虐気味につぶやくと、

坂下さんは「いや」といって、口を開く。
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