ナナイロのキセキ
初めて見る私服姿は、グレーのジャケットに黒のデニムとシンプルな装いだったけれど、背の高い坂下さんには、それがすごくかっこよくて、とてもよく似合っていた。

「はい、どーぞ。」

言いながら、助手席のドアを開けてくれる坂下さん。

「あ、ありがとうございます。」

私は少し驚きつつも、うれしい気持ちで車に乗り込む。


(坂下さんて、ほんとにやさしい・・・。)


運転席に座り、車を走らせた坂下さんを、私はしばらく見つめてしまう。


(運転するところも初めてみるけど・・・。やっぱりステキだな。)


「・・・ん?どーした?」

視線に気づいた坂下さんは、目線を前に向けたまま、やさしく私に問いかける。

「私服の坂下さんも、かっこいいなって思って。」

「え!?あ、そ、そうかな・・・。どうも、ありがとう・・・。」

恥ずかしながらも私が正直に感想を述べると、坂下さんは照れて口ごもってしまう。

動揺したのか、一瞬、ハンドルがふらついた。


(本当、自分が褒められるのは弱いんだな。すごく年上だけど・・・

こういうところは、ちょっとかわいいかもって思っちゃう。)
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