私たち、政略結婚しています。
「まあ、克哉はモテるからね。私も頑張らなくちゃ」
「確かに。伊藤さんの人気はスゴいですよね。カッコいいとは思いますよ。
でも浅尾さんはそのままでいいですよ。無理する必要なんてない」
「あら。分からないわ。いつ他の子に取られるか」
「いや……。心配ないですよ」
その時。
少し離れた場所から怒声が聞こえた。
「浅尾!!話してる暇なんてないだろ!」
秋本くんと私は顔を見合わせた。
「え。私?私に言ってるの?」
「いつもの嫉妬ですよ。やっぱり心配ないでしょ。俺と話してるのが気になって仕様がないんですよ」
「何よ、それ」
そこまで話した直後に再び克哉の声がする。
「浅尾ー!いい加減に仕事しろよ!」
秋本くんが笑い出す。
「あははっ。面白いなぁ。伊藤さん、必死だ」
「あれのどこがよ。嫉妬なんて可愛いもんじゃないわ。私がさぼってるからよ」
「もういじめるのはやめるか。
じゃ、殴られる前に俺行きます」
「殴ったりなんてしないわよ。そんなんじゃないわ」
秋本くんが去ってから、私を睨む克哉と目が合った。私は自分から視線を逸らして再び仕事に取りかかった。