私たち、政略結婚しています。



――「さっきの態度は何だよ」

休憩に入り、スタジオの隅で企画チームの後輩、留美子ちゃんとお茶の用意をしていると克哉が私の肩をグッと掴んで言った。


「え……っ」

私が振り返ると、今度は私の両方の肩に手を乗せて顔を近付けてくる。

目の前の克哉の顔を見て私は言葉を失ったかのように驚いて口をカパカパと動かす。
声が出ない。


ちょっと!!近いッて!
何してるのよ!離れて!!

そう言いたいのに。



「え、あの…?浅尾さん?伊藤さん?」


留美子ちゃんが驚いて作業の手を止めてこっちを見ている。

「だからさ、嫌なんだって。何であいつに近寄るんだよ。
俺の反応を二人で見るなんて悪趣味だな。しかも最後は無視か」


「か…つ………」

あ、声が出た。でも彼は私に話をさせてはくれない。目が怒りに満ちている。

「お前さ、マジでいい加減にしてくれよ」




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