私たち、政略結婚しています。
そのままエレベーターは三階で止まった。
「じゃ。俺ここだから」
彼がふっと出て行き一人になる。
ドアが閉まる瞬間、私の目から涙がこぼれた。
ガッ!!
えっ?
克哉が閉まりかけたドアに手を挟んでドアをこじ開けた。
「…だからお前は俺にアホだって言われるんだよ」
私は驚いて目を見開いた。
「浅尾屋の再生の目処は立っていない。今、別れたらダメなんだ。一人で泣くくらいならもう少し我慢しろ。亜由美とは何でもないから」
私は何も言えずに彼を見ていた。
「お前が嫌がるならもうお前には指一本触れないから。帰って来い」
…嫌じゃない。触れたい。抱きしめて欲しい。
理由なんて、もういい。
克哉が誰を思っていても、私を好きにはなれなくても。
同情でも、犠牲でも、なんでもいいの。
離れたくないの。
「…うー…」
私はとうとう泣き出してしまった。