私たち、政略結婚しています。
「…初めは…正直、お前のことは何とも思ってなかった。…自分ではそう思っていたんだ」
彼は私から腕を離すとゴロンと仰向けになった。
「最初は…佐奈の言う通り同情だったのかもしれないな。可哀想だって」
私は彼の端整な横顔を見つめていた。
たくさんの女性が彼に憧れるのは当然だと思う。
私が危機的状況で彼を追い込むのはおかしなことだ。克哉ならば共に生きるパートナーを自由に選べるはずだから。
「でも…俺が結婚すればいいと思ったとき…気付いたんだ」
「…何を…?」
彼は私の方を向いて微かに笑った。
「お前と一緒に生きることが…嫌じゃなかった。好きになれるって、確信した」
私の心臓がドキドキと鳴り始める。
「…でも…後悔したでしょ…?私は、こんなだし」
勝気で、我が儘で、怒ってばかりで。
――彼女と別れなければならなくて…。
「ああ。…してるよ」
彼の一言にズキッと胸が痛んだ。
やっぱり、…好きにはなれないから…?
「実家のせいにしないで…ちゃんとプロポーズすれば良かったなって。お前、面倒くさいからな」