叶わぬ恋の叶え方
日々は駆け足で過ぎていって、気がつけば入院から一ヶ月近くが経とうとしていた。
咲子には時々おとずれる場所がある。市内にある一の宮だ。
心に疲れを感じた時、お宮さんに行くとなんとなく気持ちがスッキリする。
その日は朝からにわか雨だった。昼前から晴れてくるというので、咲子は傘を差して神社に向かった。
バスを降りて参道を歩いて行くと、次第に雨も上がってきた。鳥居をくぐる頃になると、雲間からきれいな青空が見えた。
さっきまで雨が降っていたせいか、境内には誰もいない。そこには清浄な空気が流れている。
早くも気分が良くなってくる。
咲子は拝殿に近づいて手を合わせた。
それから彼女は境内にある樹齢数百年はありそうな大楠の気に近づいた。そして太い幹に両手を回し、身体を大樹に委ねる。
木に触れていると、心の澱がすべて洗い流される感じがする。そして、木のパワーをいただけるような気がする。
これが、咲子がこの町に引っ越してきてから、時折行っている儀式だ。これでまた元気で仕事に戻っていけそうだ。