叶わぬ恋の叶え方

清水さんがこっちに近づいてくる。

「ちょっとちょっと。今の先生ちょっといい男じゃない」

「ああ、あの先生?」

「何て先生?」

「知らないよ。お医者さんの名前なんていちいち確認しないし」

「見た感じ30代だよね」

「そうじゃないかな」

「なんか仕事のできる大人の男って感じ。ああいう男って、ラインにはいないタイプよね」

「そりゃあまあ、ああいう仕事をするほどの人だしねえ」

「姐さんはまだ26だから、30過ぎの男には興味ないか」

咲子は「そんなことはないけど」と思ったけど、口には出さなかった。

「私が患者だったら、あの先生が来るのが楽しみになっちゃうな」

「そう。清水さんのタイプなんだね」

「私のタイプっていうか、あの人誰が見たってカッコイイよ。おまけに医者だなんてスペック高いじゃん」

「そもそもそんなすごい人、うちらには関係のない世界の人だよ」

「でも、ファンになるくらいならいいじゃん。平凡な日常には楽しみがないとね」

「そう」

咲子は清水さんの言うことを否定も肯定もしなかった。
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