叶わぬ恋の叶え方

医師は清水さんに軽く会釈をして、咲子のベッドの横に立った。

彼は咲子の体調をたずね、それから今後の治療方針を確認した。

「あ、シュークリーム」
去り際に医師がつぶやいた。

「あ、こういうの食べちゃダメでしたっけ?」

咲子がちょっと慌てる。確か食事制限はそんなになかったはずだ。

「いえ、そんなことはありません。ただ、僕もそれ好きなんです。C社の苺シュークリーム」

包み紙で銘柄がわかる。

縁無し眼鏡の奥で、彼の目が笑っている。声がとっても柔らかい。

「そうですか。実はそれ私が勤める会社の商品なんです。同僚が持ってきてくれまして」

「確か丹羽さんは工場勤務でしたよね」

「はい」

彼は再び静かに会釈をすると、病室を去った。
< 6 / 121 >

この作品をシェア

pagetop