叶わぬ恋の叶え方
「ああ、あの楠」
隆々とした枝を広げるあの大木は、一の宮の象徴と言ってもいい。
「思わず僕も、あなたがやっていたみたいに幹にしがみついちゃいましたよ」
「え、ああ、あれですか! あんなの思い出されちゃ恥ずかしいですよぉ」
以前に境内で会った時、咲子は先生に大楠に抱きついているところ見られてしまったのだ。
「いや、あれはなかなか癒されましたよ。木のパワーをもらえたような気がしました」
先生が微笑んで言う。
「先生、癒しっておっしゃいますが、そんなにお疲れなんですか」
さっきから仕事が忙しいと言っているけど、彼はそんなに疲れているのだろうか。
「はい。でも、仕事のせいというわけではないんです。仕事量は例年どおりですから」
咲子がたずねると、先生は寂しそうな表情を浮かべた。
「実は僕、4ヶ月前に妻と離婚したんです」
「離婚!?」
「はい」
咲子はまたもや飲んでいたカフェラテを吹き出しそうになった。
またもやびっくりした。
今度はもっとびっくりした。
彼女はまじまじと目の前にいる先生の顔を見た。
彼は離婚をして傷心というわけだったのか。