叶わぬ恋の叶え方

「姐さんこそ、恋わずらいのわけを教えてよ。私がここまで話したんだからさ」

「え？　私のこと？」

「うん。好きな人いるんでしょ？」

「うん……」

　噂好きなおばちゃんたちと違って、清水さんにはそういう話をしても大丈夫だとわかっている。

「三角関係？」

「うーん、ていうか何ていうか。まだ三角関係っていうステージにも上がっていない気がする」

「向こうにはお相手がいて、姐さんの一方的な片思い？」

「うん。どっちかっていえばそうかな。お相手とは切れかかってるようでいて、意外に絆が強いというか」

「まさか不倫じゃないよね？　それは私、絶対反対だからね！」

「違うよ」

　この前聞いた話では、坂井先生は今はフリーみたいだ。

「だったらいいけど。その人、相手の女から奪っちゃえないの？」

「奪う？　奪うってどうやって？」

　咲子がきょとんとした顔でたずねる。

「奪うって奪うことよ。ただ奪うのみ」

　彼女は端的な言葉遣いをする。

「そうは言ってもねえ」

「略奪」なんて生々しい言葉は咲子の辞書にはないかもしれない。

「そ。難しいか。ま、姐さんの個人的なことだし、私が口を挟むことじゃないか」

　咲子はしばらく黙る。