叶わぬ恋の叶え方

「はい」

「あなたなら来てくれると思っていました。実際、あなたはファンを大事にする人ですよね」

 先生は今度はもっと温かい笑みを浮かべる。

 咲子の心にふわっと広がるものがあった。

 先生は近所のコインパーキングに愛車のプリウスを停めていて、帰りは咲子を自宅アパートまで送ってくれた。

 車を降りる直前に先生がたずねた。

「もう一度丹羽さんを誘ってもいいですか。今度は普段着であなたに会いたいです」

「でも、先生は元奥さんとの復縁をあきらめ切れてはいないんじゃないですか」

 咲子は心の中にある引っ掛かりを口にした。

「はい。確かにまだわだかまりはあります。でも僕はもう新しい方向に進みたいと思っているんです。だから、もう一度考えてはもらえないでしょうか」

 背後から車のサーチライトがプリウスを照らして、先生はサイドミラーを確認した。車はアパート前の路肩に停まっていた。

「後続車が。何ならこれ宿題にします?」

 自宅前の道路は細いので、長いこと車を停めておくことはできない。先生は車のエンジンをかけようとする。
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