負け犬も歩けば愛をつかむ。
すると、二重の綺麗な瞳がこちらに向けられた。



「じゃあ、一杯だけ。でも迷惑かけないようにするから、大丈夫だよ」

「あ、はい……!」



迷惑かけないようにする、っていうのは送迎はいらないよってこと?

それじゃ意味ないんだけどな……なんて思いつつも、これ以上は無理強い出来ないし、もう後は成り行きに任せるしかない。

他の皆もそう思ったようで、とりあえずお酒を頼むことにした。



「それでは、新生スルスにカンパーイ!」



皆の手に飲み物が行き渡ると、大学のサークルみたいなノリで何故か水野くんが音頭を取り、グラスを合わせた。

ビールを飲む椎名さんを横目に、緊張で渇いていた喉にウーロン茶を流し込む。



「椎名さんって、お酒も煙草も好きそうに見えるのにダメなのね」



適当に頼んだ料理を取り分けてくれている園枝さんが言うと、椎名さんは苦笑を漏らして浅く頷く。



「自分で言うのもナンだけど、俺、嗜好がお子ちゃまなんですよ。酒や辛い物はダメだけど、甘い物は好きだし」

「か~わ~いい~♪」



口元に手をあててキャッキャッと笑う真琴ちゃんが、一瞬キャバ嬢のように見えてしまった。

いくら親しみやすい椎名さんが相手とは言え、上司に向かって「かわいい」と言える神経には尊敬すらしちゃうわ。


……でも甘党なんだ、椎名さん。

そういえば、初めてコンビニで会った時もいちごのプリン買ってたもんね。

うん、やっぱり可愛い。

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