*花は彼に恋をする*【完】

広報宣伝課に黒瀬課長の後任の

新しい課長代理が入り

またいつものように仕事は進んでいく。


気がつけば春になり

私は入社4年目の

24歳になっていた。


フロアが違うために

黒瀬課長とは社食や社内で

ごくたまに

顔を合わせる程度になったが


『頑張ってるみたいだな。』

『野田さんなら大丈夫だよ。』

『気楽に話してくれていいからな。』


そう声をかけて貰える事が

私にはとても嬉しい事だった。


しかし

部下だった時は『野田』だったのが

今は『野田さん』になってしまい

微妙な隔たりと寂しさを感じた。

同時に彼への恋心は

日々募るばかりで胸が苦しかった。

想いを伝えたいと何度も悩んだけど

踏み出せない自分がいた。

仕事では何でも意見を言えるのに

恋には臆病なところが

『…ああ、私も女の子だな。』と

我ながら可愛いと思わせてくれた。


でも、そんな恋心は

ある噂と思いがけない言葉を

聞いてしまった事により

この想いは伝える事が

出来なくなってしまった。
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