*花は彼に恋をする*【完】
三橋が気分を変えようと話してた事も

全く耳に入らなくなった。


黒瀬課長がお見合い…。

私の知らない誰かと…。

嘘でしょ…?

心の中は動揺でいっぱいだった。


しかし、数日後

嘘だと願いたかった

三橋の話は確信へと変わった。

その日は午後から

広報宣伝課と企画開発課の

意見交換会があり

別フロアの大会議室に集まった。

約1時間半に及ぶ会議も終了し

会議室を出た私は

エレベーターに乗り

下のフロアの自動販売機まで行った。

あのカフェオレを買うために…。

報宣時代に

黒瀬課長が庇ってくれて

廊下で泣いていた私を励まし

カフェオレをくれたあの日から

私はこの自動販売機では決まって

あのカフェオレを買う事が多くなった。


…黒瀬課長が好き。


職場が違っても

頑張っていると伝えたい。

私を認めて欲しい。

あのカフェオレを飲めば

課長を少しでも身近に感じられる。

…そんな気がして。


エレベーターが停まり、降りた私が

自動販売機まであと少しだという時

……あっ。

私は固まった。


なぜなら、向こうから

関西事業所の営業課長と歩く

黒瀬課長の姿があったから…。





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